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目がかすんであなたの顔がはっきり見えなくなってきても、
あなたにそばにいてほしいのです。
利かなくなった鼻でも微かに、あなたの匂いがわかりますから・・・・・。
もうあまり時間は残されてないから、
だからこそ大好きなあなたに、
すこしでもいっしょにいてほしいのです。
鼻の頭もだいぶ乾いてきてしまいました。
息をするだけでも辛い気分です。

でも、あなたが近くにいてくれるだけで、わたしの心はとても安らぐのです。
そう言えば・・・・、ついさっき夢を見ました。

多分わたしがあなたに初めて連れて行ってもらった、
川原の土手だったような気がします。
わたしはまだ2歳くらいで、狂ったようにはしゃいでいました。
首輪の紐をはずしてもらい、
わたしは猛ダッシュであなたの周りを走り回っていました。
この世で自分以上に早く走れる動物なんていない気がしていたのです。
あなたは、そんな得意気なわたしを見て大笑いしていたようです。
あなたが手を広げて「こっちへ来い」といった仕草をしたから、
わたしは猛ダッシュのまま、勢いよくあなたの胸に飛び込んで行きました。
ドスンとぶつかったわたしを、あなたは笑いながら抱っこし、
いっしょに後ろに倒れ込みました。
わたしは鼻先をあなたの胸元に埋め、いつまでも転げ回っていました。
大好きな、あなたの懐かしい匂いがしました。

ふと目が覚めた時、わたしは泣いているあなたの胸に抱かれていました。
やはりあなただったのですね・・・・・。

もうすぐお別れですが、どうかこのことだけはずっと憶えていてください。
わたしがあなたのことを、とてもとても愛していたということを・・・・・・・。
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